ベトナムは、近年の急速な経済成長や若い労働力の豊富さ、さらにIT需要の拡大により、多くの日本企業にとって注目度が高まっている国です。日本からの直接投資も増えており、「東南アジアでの新たなビジネス拠点を探している」「コスト競争力の高い人材を確保したい」という企業にとって、ベトナム進出は大きなチャンスと言えるでしょう。とはいえ、まだ海外展開に慣れていない方や、文化や言語の違いから不安を感じる方も少なくありません。そこで本記事では、若い労働力やIT需要が注目されるベトナム進出の魅力をはじめ、成功のポイントやリスク対策まで詳しく解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、ベトナム進出を検討する際の参考にしてみてください。
ベトナム進出が注目される理由
ベトナムは、東南アジアの中でも安定した経済成長率と豊富な人材に恵まれており、日本企業だけでなく欧米の多国籍企業からも注目を集めています。以下では、ベトナム進出が近年一層注目される背景について、主要なポイントを確認していきましょう。
経済成長率と政治的安定性
ベトナムの経済成長率は、世界銀行のデータによると2022年に約8.0％を記録し、ASEAN諸国の中でも高い水準を維持しています。政治面においても比較的安定しており、積極的な外資誘致政策を推進していることが特徴です。
特に注目されるのが、ベトナム政府によるインフラ整備やビジネス環境の改善施策です。工業団地の整備や交通インフラの拡充によって、事業立ち上げのハードルが下がりつつあります。また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、早期のロックダウン対策などが奏功し、生産活動やサプライチェーンの回復が比較的早かった点も魅力の一つです。
日本企業の参入実績
JETRO（日本貿易振興機構）の調査によると、ベトナムに進出している日系企業の数は年々増加傾向にあります。製造業を中心に、IT・サービス分野、商社、建設、金融など多彩な分野の企業が現地でビジネスを展開しており、進出形態も駐在員事務所から現地法人設立まで多岐にわたります。
こうした日本企業の増加は、「進出実績の蓄積」による相乗効果を生み出しています。例えば、不動産賃貸や物流、法律事務所など、現地における支援サービスを提供する日系企業が増えており、はじめてベトナムに進出する企業にとってもビジネス環境が整いつつあるのです。すでに多くの企業がベトナムでの成功例をつくり始めていることが、後に続く企業にとって安心材料となっています。
ベトナムの若い労働力がもたらすメリット
「若い労働力」はベトナムの最大の魅力の一つです。生産年齢人口が拡大し続けるベトナムでは、人材確保が比較的しやすいだけでなく、学習意欲の高い若者が多いことも特長です。ここでは、平均年齢の若さや人件費面でのメリットについて詳しく見ていきましょう。
平均年齢の若さと人材供給の豊富さ
ベトナムの人口は約9,800万人（2023年時点、統計総局などの情報を参照）とされ、そのうち30歳以下が半数以上を占めるといわれています。平均年齢は30歳前後と非常に若く、労働人口が今後も増加していく見通しです。
この豊富な労働力は、製造業やサービス業のみならず、IT分野においても大きなアドバンテージをもたらします。大学や専門学校などで技術教育を受けた若者が毎年大量に輩出されるため、企業が必要とする人材を比較的スムーズに確保しやすいのです。さらに、若い世代は新しい技術や知識の習得にも積極的で、英語を含む外国語スキルを身につける人も増加しています。
人件費と雇用コスト
ベトナムは、ASEAN地域の中でも人件費が比較的低い水準にあり、製造拠点としてのコスト競争力が高いとされています。もちろん地域差はあるものの、ホーチミンやハノイといった大都市以外の地域ではさらに低コストで人材を確保できる場合もあります。
ただし、ここ数年は急速な経済成長や都市部への人口流入も相まって、最低賃金や給与水準が上昇傾向にあることは留意が必要です。競合他社との人材獲得合戦が活発になると、優秀な人材ほど給与や福利厚生面での条件を求めるようになります。そのため、安定した雇用環境の提供やキャリアアップの支援など、企業としての魅力づくりが重要となります。
急成長するベトナムのIT需要
ベトナムは、製造業だけでなくIT産業においても急激な成長を遂げている国の一つです。特にオフショア開発拠点としての注目度が高まっており、多くの企業がソフトウェア開発やシステム保守、AI・IoT関連の研究開発などをベトナムのエンジニアに委託しています。この節では、ベトナムにおけるIT市場の動向と成長要因を見ていきましょう。
オフショア開発拠点としての魅力
ベトナムがオフショア開発拠点として注目される理由の一つに、「高い技術力を持った若手エンジニアの豊富さ」があります。大学のIT関連学科や専門学校が増えており、プログラミングやネットワーク、データベースなどの分野で即戦力となる人材が育成されています。また、英語をはじめとする外国語が堪能なエンジニアも少なくなく、コミュニケーション面での障壁が比較的小さい点も魅力です。
一方で、国内需要の拡大によって優秀なエンジニアが自国内の企業に留まるケースも増えており、人材の獲得競争が激化しているのも事実です。とはいえ、他のアジア諸国と比べて競争率はまだそこまで高くないため、質の高いエンジニアを確保しやすいと言えます。
IT市場規模の拡大とデジタル化の推進
ベトナム政府は「デジタル経済の拡大」を重要政策の一つに掲げており、電子政府の推進やスマートシティ構想など、官民一体となったITインフラの整備が進行中です。スマートフォンの普及率も高く、若年層を中心にSNSやEコマース利用が拡大していることで、市場全体がデジタルシフトを加速させています。
ITサービスを提供する国内外企業の数は急増しており、AIやIoT、ビッグデータ解析などの先端分野への投資が続いています。こうした動きは、ベトナムが単なる「低コストのオフショア先」ではなく、「イノベーションを生み出す拠点」として発展していく可能性を示唆しています。近い将来、優秀な人材と豊富な市場需要が融合し、アジアのITハブとしてさらなる注目を浴びることが予想されます。
ベトナム進出を成功させるためのポイント
ベトナムの経済成長と若い労働力、IT需要の高まりは非常に魅力的ですが、実際に現地へ進出する際には「市場調査」「パートナー選定」「法規制の理解」など、クリアすべきステップがいくつも存在します。ここでは、ベトナム進出を成功させるうえで押さえておきたいポイントを解説します。
現地パートナー選定とネットワーク作り
海外でのビジネスを円滑に進めるためには、現地の信頼できるパートナーを見つけることが非常に重要です。特にベトナムでは、行政手続きやライセンス取得、労務管理などローカルの習慣が大きく影響する分野が多いため、現地事情を理解したパートナーの存在が成功のカギになります。
また、ベトナムでのビジネスを拡大するには、ネットワークの構築が欠かせません。地元商工会議所、日本人会、JETROや現地の日系企業コミュニティなどに積極的に参加し、人脈を広げながら有益な情報交換を行うと、トラブルが起きた場合の対応や新しいビジネスチャンスの発見につながりやすくなります。
法規制・投資制度の理解
ベトナムでは、外資企業の設立形態や業種ごとに規制が異なり、法令が頻繁にアップデートされることも珍しくありません。現地法人の設立手続きやライセンス取得、税務申告などの手続きは、日本国内の感覚とは大きく異なる部分があります。
進出時には、現地の弁護士やコンサルティング会社と連携し、最新の法令情報を収集しておくことが大切です。例えば、2020年に施行された投資法や2021年の改正労働法の影響によって、企業活動に制限や特別許可が必要となるケースもあります。こうした制度を正しく理解し、必要な手続きを漏れなく行うことで、スムーズな事業運営が実現します。
ベトナム進出のリスクと対策
海外進出にはさまざまなリスクが伴いますが、ベトナム進出の場合も例外ではありません。文化や商習慣、政治状況の違いを把握しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。ここでは、ベトナム進出における主要なリスクと、その対策を解説します。
文化・商習慣の違い
ベトナムは歴史的・文化的背景が豊かであり、日本とは異なるビジネス慣習が存在します。例えば、ベトナムでは「面子」や「人間関係」を非常に重視する文化があり、交渉やコミュニケーションの場面で誤解が生じやすいことがあります。また、一般的な商談の進め方や契約成立のプロセスも、日本とは異なる場合が少なくありません。
こうした違いを理解し、現地スタッフや取引先との関係を円滑に保つためには、こまめなコミュニケーションと相手の文化への理解が不可欠です。日本のやり方を押し付けるのではなく、相手の考え方を尊重しながら協議を進める姿勢が大切です。
為替リスク・政治リスク
ベトナムの通貨ドン（VND）は、世界的にはまだ流動性がそれほど高くないとされるため、急激なレート変動が生じる可能性があります。さらに、今後のグローバル経済の動向によっては、輸出入コストや資金繰りに影響が出ることも考えられます。
政治面では、社会主義国であるベトナムの法改正や行政手続きの変更が予期せぬタイミングで行われるケースがあるため、最新情報の入手とリスクヘッジの体制づくりが重要です。具体的には、複数の金融機関との取引を確保しておいたり、契約時に為替変動のリスク分担条項を盛り込むなどの工夫が考えられます。
まとめ
ベトナム進出は、若い労働力の豊富さやIT需要の拡大といった魅力的な要素が多く、東南アジア戦略の一環としても非常に有望な選択肢です。平均年齢30歳前後という若い人口構成は、人材確保やイノベーション創出の面で大きなメリットをもたらします。さらに、ベトナム政府が推進するデジタル化やIT産業の育成施策によって、今後もIT分野の成長が期待されるでしょう。
一方で、実際にベトナム進出を行う場合には、文化や商習慣の違い、頻繁に改定される法制度、為替リスクなど、乗り越えるべきハードルも存在します。スムーズに事業を開始し、安定して成長を続けるためには、最新の現地情報の収集や信頼できる現地パートナーとの連携、リスク管理体制の構築が欠かせません。
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