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マレーシアEC事情:都市部 vs 地方で異なるユーザー行動

東南アジアの中でも、マレーシアは経済成長が続き、多様な文化背景を持つ国家として知られています。英語やマレー語、中国語など複数の言語が使われ、宗教・民族の違いから独自のライフスタイルが形成されているのも大きな特徴です。
近年、この多様性がEC(電子商取引)の分野においても大きく影響しており、都市部と地方ではECの利用状況やユーザーの購買行動が大きく異なる傾向が見られます。マレーシアの首都クアラルンプールを中心とした都市部ではインターネットやスマートフォンの普及率が非常に高く、ECが日常生活に欠かせない存在になりつつあります。一方、地方に目を向けると、インフラや物流環境の制約がまだ多く、都市部とは異なる優先事項を持ったユーザーが多いのです。
本記事では、マレーシアEC市場の現状や成長性を概観しながら、都市部ユーザーと地方ユーザーの購買行動の違いについて詳しく解説します。さらに、それぞれの特徴に合わせたEC戦略の考え方や、実際に成功している事例も紹介します。マレーシアへのEC参入やマーケティングを検討している方にとって、地域ごとの多様性に対応することが鍵となるでしょう。

目次

マレーシアEC市場の現状と成長性

マレーシアのEC市場は、周辺の東南アジア諸国と同様に急速に拡大しています。国全体のインターネット環境の整備が進む中、政府もデジタル経済を推進し、EC利用のインフラを整える施策を積極的に行っています。コロナ禍の影響でオンラインショッピングへの需要が一気に高まった背景もあり、今後もECが重要な流通チャネルとしてさらなる成長を続ける見通しです。

インターネット普及率とオンライン消費額の増加

マレーシアの人口はおよそ3,200万人とされ、インターネット普及率は80%を超えるともいわれています。都市部を中心に光回線や4G/5Gといった高速通信が一般化しているため、スマートフォンを用いたオンラインショッピングが一般的となりました。近年ではECサイトを通じた年間のオンライン消費額が急増しており、食品や日用品だけでなく、ファッションやビューティー、家電など幅広いカテゴリーでネット購入が活性化しています。
また、マレーシアではクレジットカードやデビットカードの利用率も高まりつつあり、電子ウォレットやスマホ決済アプリの普及も加速中です。こうした決済手段の多様化と利便性向上によって、さらにオンラインショッピングが浸透していくことが予想されます。

Shopee・Lazadaなど主要プラットフォームのシェア

マレーシアでECといえば、ShopeeとLazadaが2大プラットフォームとして高いシェアを誇っています。Shopeeはゲーム要素やライブ配信、バウチャー配布などの施策がユーザーに受け入れられ、短期間でユーザーベースを拡大させました。Lazadaは東南アジア全域で展開している大手ECサイトで、大型セールやグローバルブランドとの提携を強みにしており、マレーシア国内でも根強い人気があります。
その他、国内のローカルECサイトや独自のオンラインストアを展開する企業も増えていますが、消費者がまずチェックするのはShopeeやLazadaといった大手プラットフォームであることが多いのが実情です。このため、マレーシア市場でEC展開を考える場合は、これらのプラットフォームをどのように活用するかが一つの鍵になります。

都市部・地方でのインフラ整備と物流状況の違い

クアラルンプールやジョホールバル、ペナンなどの都市部では、インターネットや交通インフラが整っており、宅配サービスもスムーズに利用できる環境が整備されています。注文から到着まで1~3日程度で完了するケースが多く、ユーザーも即時性を期待しています。
一方で、離島や農村地域など地方では、まだまだ物流網が十分に張り巡らされておらず、配送に時間がかかることや受け取りの手間が多いことが課題となっています。また、通信インフラも都市部ほど快適ではない場合があり、ネット環境が不安定である地域も存在します。そのため、地方ユーザーにとってECを利用するメリット・デメリットが都会のユーザーとは大きく異なるという現状があります。

都市部ユーザーの購買行動の特徴

マレーシアの都市部に居住するユーザーは、ライフスタイルや所得水準が比較的高い傾向があり、EC利用に対しても「便利さ」や「即時性」を強く求めています。SNSやインフルエンサーを活用したマーケティングが効きやすく、限定キャンペーンやフラッシュセールにも積極的に反応します。ここでは、そうした都市部ユーザーの購買行動の特徴を掘り下げてみましょう。

スマホ中心のショッピングと即時性重視

都市部では、スマートフォンを主なデバイスとしてECを利用するユーザーが大半を占めると言っても過言ではありません。会社の休憩時間や移動中に気軽にアプリを立ち上げ、商品を検索して注文し、最短で翌日に受け取るという流れが一般的になりつつあります。
特に、若年層や働き盛りの世代にとっては、自宅や職場まで商品が届くECの利便性は非常に高いと感じられ、少々の配送費用がかかったとしても時間短縮を優先する傾向が見られます。また、クレジットカードや電子ウォレットでの決済がスムーズに行える環境が整っているため、購入までのハードルが低いことも即時性を後押しする要因となっています。

レビュー・SNSとの連動を重視した購買判断

マレーシアの都市部ユーザーは、SNSやレビューサイトを参考にして商品を選ぶ傾向が強いです。InstagramやFacebookをはじめ、TikTokやYouTubeなどのプラットフォームで商品情報を収集し、その後ShopeeやLazadaなどのECモールに移動して購入を検討するという流れが一般化しています。
特にレビューの数や評価の高さは購買判断に直結しやすく、星5評価の多い商品やインフルエンサーが紹介している商品ほど売れ行きが良いという傾向があります。また、ライブ配信によって商品デモやQ&Aを行う手法も人気を博しており、都市部ユーザーは「リアルタイムで商品を体験し、購入を決断する」スタイルを積極的に取り入れています。

プロモーション・限定キャンペーンへの高反応

都市部の購買力が高いユーザーは、フラッシュセールや期間限定のプロモーションにも敏感です。ShopeeやLazadaが定期的に開催する「9.9」「10.10」「11.11」などの大型キャンペーン時には、特別価格やバウチャーを求めてアクセスが集中することが多く、売上が急激に伸びる店舗も珍しくありません。
また、電子ウォレット決済の利用者向けにキャッシュバックを行うプロモーションや、特定のクレジットカード使用時に追加割引を提供するなど、多彩なセールスプロモーションが展開されます。都市部のユーザーは、こうした情報をSNSや友人間で共有し、お得なタイミングを狙ってまとめ買いをするケースが多いのが特徴です。

地方ユーザーの購買行動の特徴

一方で、地方に住むユーザーの購買行動には、都市部とは異なる優先度や動機が存在します。物流インフラの制約や価格への感度、言語面での配慮など、多面的に異なるニーズが出てくるのがマレーシアの地方市場の特徴です。ここでは、地方ユーザー特有の購買行動を見ていきましょう。

価格への敏感さとプロモーション依存度の高さ

都市部と比較して、地方ユーザーは収入や購買力がそれほど高くない場合も多く、商品選択時の価格への敏感度が上昇します。送料や手数料がかかることへの抵抗感も大きいため、プロモーションや割引がないとECを利用しにくいという声も少なくありません。
特に、ショッピングモールや大型スーパーが近くにない地域では、オンラインでしか手に入らない商品を求める動機は高いものの、限られた予算の中で慎重に購入を検討する傾向があります。そのため、バーゲンセールやバウチャーを活用しないと購入に踏み切らないといったユーザーも一定数存在し、プロモーション施策のウェイトが都市部よりも大きくなることが多いのです。

言語対応(マレー語)の重要性

マレーシアでは英語が通じる地域が多いと言われていますが、都市部に比べると地方では必ずしも英語を得意とする人が多いわけではありません。マレー語こそがメイン言語である地域やコミュニティが存在し、ECサイトや商品説明が英語のみだと敬遠されるケースが見受けられます。
そのため、出店者にとってはマレー語でのサポートや商品説明文を用意することが重要です。カスタマーサービスや問い合わせ対応においても、マレー語でコミュニケーションができる体制を整えることで、地方ユーザーからの信頼を獲得しやすくなります。

配送スピードより信頼性・確実性を重視

都市部では「即日配送」や「翌日配送」のようなスピードが重視されるのに対し、地方では必ずしも配送の速さが最優先事項ではないケースがあります。むしろ、確実に商品が届くかどうか、荷物が途中で紛失しないかなどの「信頼性」がより大きな不安要素です。
配達に時間がかかっても、しっかりトラッキングができたり、万一トラブルが発生した時にサポートを受けられる安心感があると地方ユーザーは納得して購入することが多いです。無事に商品を受け取り、問題がなければリピート購入につながりやすい反面、一度トラブルがあると離脱される可能性が高いことも意識しておきたいポイントです。

都市部・地方で異なるEC戦略の考え方

このようにマレーシアのEC市場では、都市部と地方でユーザー行動に顕著な違いが見られます。出店者やマーケターは、全土を一括りにするのではなく、地域ごとの特徴に合わせた戦略を立案することが成功への近道です。ここでは、具体的にどのようなポイントに着目して戦略を切り分ければよいのかを考察します。

商品ページ・広告コピーの言語最適化

マレーシア市場での言語選択はきわめて重要です。都市部向けには英語のみでも問題なく売上を伸ばせるケースが多い一方、地方のユーザーにはマレー語対応を求められることが多々あります。
商品の魅力を伝えるコピーライティングを英語とマレー語の両方で用意したり、バナー広告や検索広告のキーワードを地域別に最適化するなど、ターゲットごとに細かく調整することで、無駄な広告費を削減しながらコンバージョン率を高めることが可能です。

バウチャー設計や配送設定の地域別最適化

都市部ユーザーは価格よりも利便性やスピードを重視する傾向が強いため、送料無料やスピード配送を打ち出すキャンペーンを好む場合が多いでしょう。一方、地方ユーザーにはバウチャーや大幅な割引を提供し、配送費用を抑える施策のほうが効果的に働くことがあります。
また、地方では配送日数が長くなるのは仕方がないとして、確実に商品が届く保証を明示したり、配送状況のトラッキング情報をこまめに提供すると安心感を与えられます。地域別に異なる配送パートナーを使い分ける企業もあり、物流コストとのバランスをとりながら最適化を図るのがポイントです。

ライブコマースや動画広告の使い分け

都市部ユーザー向けには、SNSや動画プラットフォームとの連携が高いライブコマースや短尺動画広告が大きな効果を発揮することが多いです。通勤や休憩時間など、スキマ時間にエンタメ感覚で商品情報に触れられる手段として、ライブ配信やインフルエンサーのレビュー動画が人気を集めています。
一方、地方ユーザーに同様の施策を当てはめても、ネット環境の問題や興味分野の違いから十分な効果が得られないケースがあります。紙媒体や地元ラジオなどオフラインメディアを合わせて使う手法や、商品デモの解説をマレー語で行った動画を準備するなど、地域の現状に即したコンテンツ制作が求められます。

成功事例に学ぶ地域別マーケティングの実践

では、実際にどのような企業が地域別のマーケティング戦略を活かして成功を収めているのでしょうか。ここでは3つの事例を取り上げ、具体的な施策と成果を簡単に紹介します。

都市部中心に拡大した美容系D2Cブランド

ある美容系D2Cブランドは、マレーシアの都市部女性を主なターゲットと位置づけ、InstagramやTikTokを積極的に活用しながら、Shopeeでの販売を拡大しました。
製品の使用感やビフォーアフターを動画でわかりやすく伝え、ライブ配信中に限定クーポンを発行する施策が奏功。クアラルンプールの若い女性ユーザーを中心に口コミが広がり、リピート率も高まったのです。また、都市部では交通網が発達しており、即日配送サービスとの提携が利用者の利便性をさらに高めました。結果として、ブランド設立から1年足らずで月商数百万リンギットを達成するなど、都市部向けのプロモーションが大きく実を結んだ成功例です。

地方ユーザーから支持されたローカル密着型商品

一方、地方で高い評価を得たのが、マレー語対応を徹底した家庭用品メーカーです。商品説明や広告コピーをマレー語主体で作成し、地元コミュニティとの協力関係を築くことで口コミを拡大。ECサイトの問い合わせにもマレー語で即時対応する体制を整えた結果、「地方でも安心して購入できるブランド」として信頼度を高めることに成功しました。
また、配送についても地元の物流パートナーを活用し、配送トラブルが起きにくい仕組みを構築。到着までに多少時間がかかっても確実に届くという評判からリピーターを増やし、都市部より競合が少ない地方市場で安定した売上を獲得しています。

言語・価格・キャンペーンを最適化して成功した事例

さらに別の事例として、雑貨やアパレルを扱うECショップが都市部・地方双方で売上を伸ばしたケースがあります。ここでは、以下のような地域別最適化を行いました。

  • 都市部向け: 英語中心の広告とSNS展開を行い、トレンド感のある短期セールや限定アイテムを頻繁にリリース。即時配達オプションを設け、忙しいユーザーでも受け取りやすい仕組みを構築。
  • 地方向け: マレー語による丁寧な商品説明と大型バウチャーを提供し、一定額以上で送料無料に設定。配送が遅れる可能性があることを事前に明示しつつ、追跡サービスを充実させて安心感をアピール。

この結果、都市部・地方それぞれのユーザーに適切なアプローチができるようになり、ブランド全体の売上が飛躍的に伸びたそうです。特に、地方ユーザーの新規獲得が伸びたことが全体成長の原動力となったといいます。

まとめ|マレーシアECで地域ごとの違いを活かすために

マレーシアのEC市場は、都市部と地方でユーザーのニーズや行動が明確に異なるのが大きな特徴です。どちらか一方をメインターゲットとするのか、あるいは両方を狙って戦略を組むのかによって、必要な施策やメッセージは大きく変わります。こうした地域ごとの違いを的確に把握することで、より効率的かつ効果的なマーケティングを展開できるでしょう。

都市部 vs 地方の「分けて考える姿勢」が成功の鍵

マーケティングやEC運営において、単に「マレーシア向け」と一括りにしてしまうのは危険です。都市部ユーザーはSNSや即時性、ライブコマースに強く反応し、一方で地方ユーザーは価格や言語対応、確実な配送といった要素を重視します。それぞれの行動様式や価値観を踏まえた施策こそが成果につながるカギとなるのです。

一元的な展開ではなく、柔軟なローカライズを

マレーシアは多言語・多民族国家であるため、英語だけでなくマレー語、中国語など、様々な言語圏のユーザーが存在します。地方に行けば行くほど英語が通じにくいケースも増えるため、言語対応が売上やリピート率に直結する場合も少なくありません。
また、物流やインフラの整備状況も地域によって異なるため、配送オプションや費用設定、プロモーション内容を細かく変えることでコストを抑えながら売上を最大化できるでしょう。都市部・地方のユーザーがそれぞれ抱える課題を理解し、最適なローカライズ策を講じることで、マレーシアEC市場の多様性を強みに変えていくことができます。

都市部の即時性・SNS拡散を狙う戦略と、地方の価格重視・言語対応を中心とした戦略を上手に組み合わせることで、マレーシア全体をカバーするビジネスモデルを構築することも可能です。今後も成長が見込まれるマレーシアEC市場で成功を収めるためには、こうした地域別戦略の重要性を認識し、柔軟に取り組む姿勢が求められます。ぜひ、本記事を参考に、自社の状況や商品特性に合った地域別施策を検討してみてください。

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